このお話は春のお話、「桃」から始まりました。
桃
桃を近くで見たくてたまらない異界の女の子と、それを慎重に眺めながら一緒に旅をする男の人のお話です。
ずいぶん前に、春の花を見たいのに飛ばされてしまう少女のお話をお届けしました。
その少女はずっとどこかで花を見たいと念じていたらしく、
花のない季節に流れる電車の外の景色を見ていた私に、
わざとらしく向こうを向いてしゃがみこんだ姿を見せました。
一見限りで忘れていた無情な作者に願ってみせるなんて、
少女はずいぶんと花を見たかったのでしょう
以前に書いた沼の姫と、書き続けている魔が事祓いの少女のお兄さんが、
花を見たい少女のために協力してくれることになりました。
少し震えば壊れてしまいそうなあやうい旅です。
皆様も大きな声を出さずに、静かに見守ってあげて下さい。