観光地 |
李・青山華 |
観光地は、どこに行ってもよそよそしい。ここに来るものはよそ者だけであり、 その場所の持つ本当の意味は、少し寄ってみただけのよそ者にはわからないし、 わからせる気もない。 メディアによって喧伝された「ここの魅力」なるものを味わいたい者に、その一端を 感じさせるようなシステムを作り、上澄みを啜ってもらう。そしてその気分を、 遠く離れたところに持ち帰りたいと望ませて、様々な類似呪物をそれなりの値段で買い取ってもらう。 そのようなシステムの上に、観光地は成り立っている。 かつて在ったはずの、土地のもつ力はとうに枯れ果て、その場所が既に特別な意味を 持たなくなっていても、そこの者たちはその魔力を偲ぶ影を売り続ける。 そして、土地自身は風化を越えて、新たな力を持ち始める。人の集まるところに顕れる力である。 本来の意味を謳われながら、その意味はもう欠片もなく、まったく別の力を以って、 その土地はある種の繁栄を続けている。 |