微量毒素

 メールマガジン:解毒散 
【 an antidote powder 】


あなたの知らない世界が視えてくる、蓄積した毒を祓う短いエッセイです。
週一回、水曜日発行予定です。ぜひご購読ください。



解毒散 【an antidote powder】 (マガジンID:0000141236)

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処方
 このような方に:

日々の生活の中で、溜まっていく微量の毒素。昨日と同じ今日、今日と同じ明日。生気に満ちた艶やかな心は、この毒素に包まれて、次第に干割れ、静かに死んでいきます。生命の死の前に、心の死を迎えたとき、残りの人生を、どうやって過ごせばいいのでしょう。そんな状態になる前に、蝕まれかけた心から、毒素をこそりと落とすのが、この解毒散です。

 成分・分量 (1包中)━━━━━━━━━━━━━━━━━━
中原中也・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28y
G.Apollinaire・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24y
H.P.Lovecraft・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24y
F.Fellini・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30y
A.Gide・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・31y
movies・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・40y
李小龍・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30y
司馬遼太郎・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28y
 効能・効果━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●倦怠感 ●無力感 ●無気力 ●無感動

●この解毒散には、やはり微量の毒素が含まれます。その毒素がこびりついた毒素を落とし、服用者の心を剥き出しにするのです。剥き出しになった心は傷つきやすいですが、替わりにあなたに確かな生を取り戻します。傷つきやすい心を再び手にしたとき、子供の一日が、あんなにも永い理由がわかるでしょう。

 用法・用量━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
心の乾いた人 1回 1包 1週1回を限度とし、なるべく干涸時に服用すること。
服用感覚は一日以上おくこと。常用すると、効果が減弱し、所期の効用が望めなくなることがあります。ただし、服用初期は、固着した毒素を祓い落とすため、何度も服用するのも効果的かもしれません。

 使用上の注意:━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
●盗作者の手の届かない所に保管してください。
●誤用を避け、品質を保持するため、他のメディアに入れかえないでください。
●直射日光を避け、なるべく湿気の少ない、涼しい所に密栓して保管して下さい。
●これはまだ、心が乾ききっていない人のために作られた、特別な散薬です。傷つくのが怖ろしくて、既に心を固めてしまった人にはお勧めできません。乾ききってしまっていると、服用により、その心自体が塵となってしまう恐れがあります。

発売元 微量毒素有限公司




 メールマガジン:解毒散 サンプル 
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解毒散 【 an antidote powder
2004.10.03
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日々の生活の中で、溜まっていく微量の毒素。昨日と同じ今日、今日と同じ明日。生気に満ちた艶やかな心は、この毒素に包まれて、次第に干割れ、静かに死んでいきます。生命の死の前に、心の死を迎えたとき、残りの人生を、どうやって過ごせばいいのでしょう。そんな状態になる前に、蝕まれかけた心から、毒素をこそりと落とすのが、この解毒散です。

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* 祭りで賑やかな対岸を見る此岸 *
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 賑やかな祭りの夜。人混みに疲れて、横丁に逃れる。よく知っているはずなのに、暗い道はまるで別の世界のよう。戸袋が鈍く闇を溜め、ふたの外れた側溝が暗いあぎとを開いている。朝顔の蔓さえ、誘うように揺れている。忍び笑いを漏らしながら路地を抜けると、橋がある。その橋を渡って向う対岸は、祭りの夜とは思えないほど沈み、暗い。

 渡った対岸から祭りを見る。自分たちも沈む闇の中から見る祭りは、いっそう華やかで、物哀しい。物哀しい? そう、祭りはいつでも終わりを秘めているから。

 いつも埃っぽい道に、一夜広がる夢の世界。迷い込んだら抜け出せなくなりそうな雑踏。いつもひっそりと静まり返った街並みに、どこにこんなにいたのかと思うほどの人が溢れ返る。翌日はちぎれた吹流しが脇に蟠って、まだ祭りの気配を残しているが、それもそそくさと片付けられて、あっという間に町はまた、まどろむように静まり返る。

 でも、今はまだ祭りの真っ最中。町はどこか浮気な熱気に浮かされて、子供たちが通る。お兄さんたちが通る。お姫様たちも通る。昔を懐かしむように、大人たちもそぞろ歩く。たくさんの手に金魚を入れた袋が下がり、はっかが咥えられ、景品が手渡される。綿菓子が紡ぎ上げられ、たこ焼きがくるりと回され、七色のカキ氷が手渡される。一晩限りの魔法。陽の下で見たら、その魅力のほとんどを失ってしまうものたち。でも、此岸からは、そのどれにも手が届かない。

 うっとりと祭りの喧騒を眺めていたが、突然気付いた。祭りの時間はもうとっくに終わっているはず。時計がないのではっきりとはわからないが、もう真夜中を疾うに過ぎている時刻だ。親しんでいるこの町に、夜を明かす祭りはない。

「何でお祭りをやっているの?」

 問いに、怪訝そうな問いが重なる。

「祭り? 祭りって何?」

 振り向くと、対岸は暗く静まり返っている。一瞬前まで、あれほどに華やいで、明るい光の中を歩き回っていた人たちは一人もいない。もう千年も前から、そうであったように。

「そろそろ帰ろうか」

 その言葉に促されて、2−3歩歩き出すが、いったいどこに帰っていいのか、まったく思い出せない。

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最近の出来事;

HPをリニューアルしてから、とにかくいろいろやっています。息切れしないように、ゆっくりと進めていかなければいけないのは、わかっているのですが、矯めすぎても勢いが死んでしまいます。どうもそのあたりの加減が掴みにくいですね。

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微量毒素