微量毒素

自動車

乗りたいと思う車(外国車編)
李・青山華

 外国車で、欲しいと思う車はあまりない。所有したいという気持ちまでにこがれる車が、あまり見当たらないのだ。

 BMWのハンドリングは、日本車では絶対味わえないレベルだ、とか、アルファ・ロメオのエンジンはとても官能的だ、とか言う話を聞くと、ぜひ一度お手合わせを願いたいとは思うが、乗ってみるためにいろいろしようという気までは起こらない。基本的に、面倒なことはいやなのだ。


 外車に乗ることをためらう理由の一つに、故障が多いということがあげられる。乗る時に、故障の不安が伴うと、それだけで官能性は大幅に割引されてしまう。

 異性といて、会話を楽しんでいるときに、相手がくだらないことを言うと、それだけで気持ちが醒めてしまう。その後の親密な約束があっても、相手のくだらないリアクションで、席を立って帰ってしまうこともある。

 相手との会話に、十分な知性と、スリルさえ感じるほどの駆け引きがないと、その異性に対する興味さえ失われてしまう。どんなものでも、こちらの提供するもの以上に、返ってくるものがなければ、官能性は失われてしまう。異性の場合は、駆け引きをできるだけの知性。車の場合は、こちらの思うように走らせられる性能。車が、走ること自体に不安を感じさせられるようだと、安心して身を任せられない。不安は、官能を醒ましてしまうのだ。


 実のところ、アルファの車には乗ってみたい。オートバイだが、Z400FXに乗っているとき、狼の遠吠えのようなエンジン音と、重い車体を傾けてのコーナリング中に感じる一体感で、何度も心臓が震えるほどの官能を覚えたことがある。異性といるより、はるかに気持ちのいい体験で、あれは一つのエクスタシーの形だろう。そのような官能性がアルファにあるのなら、ぜひ一度味わってみたいし、所有したい気持ちになるかもしれない。けっこう、故障はあるようだが。現在は、アルファのデザインがどうしても好きになれないため、所有したいという気持ちはない。

 そうそう、外車でどうしても欲しいと思った車があった。イタリアのロータス・エリ−ゼである。デザインがあれだけいっていれば、それだけで十分である。値段も、買えない値段ではない。ただ、エアコンがないのはどうも……日本で走るときに、エアコンなしというのは、苦行になる。同じ苦行になるなら、オートバイの方が数段いい。バブル崩壊の煽りで、正規代理店がないというのも、手を出し切れない理由である。ガレージも欲しくなるし…

 もうひとつ、これはもう手に入れようもないが、コブラは欲しいと思った。あの、ボディラインがなんとも官能的で、ため息が出るほど気に入った。あの車は、海の上の断崖に沿う、舗装されていない道を走ると、とても似合いそうである。

 ロータス・エリーゼも、アルファも、都会の道は似合わない。ヨーロッパの田舎道を、ゆったりと走ったり、人家のない荒れ野を、エンジンを吼えさせながら走るのが、きっといちばん似つかわしいのだろう。


そんなわけで、現在乗りたい外国車はない。


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