微量毒素

おはなし
ミニスカート
李・青山華

ガラじゃないのはわかってる。

そもそもスカートなんてものをはくのは、特別な時だけだった。
自分が自分でないように装わなければいけないお祝いのときだけ。
七五三や入学式、卒業式。

女しかはかないスカートをはくのはいやだ。
だってスカートをはいていると行動が制限されてしまうから。
なぜまったく無防備になってしまうこんなものを、
女だけがはかなければならないのか わからなかったから。

だから私はいつもスカートなんてはかなかった。
親も最初は色々言ったけど最後にはあきらめてくれたし、
友達は皆 私がそうしたいのだと納得してくれた。
あいつ以外は、みんな。

そして私はまた振り出しに戻る。
ガラじゃないのはわかってる。
でも。

でもあいつも。

ガラじゃないよ、私にこんなものをよこすなんて。

どうしてこんなものを買ったんだろう。
サイズはどうしてわかったんだろう。
どんな顔をして買ったんだろう。
ガラじゃない、ぜったいにガラじゃない。

これはそれほどまでして手に入れて、
私が怒り狂うのを予想しながら渡さなければいけないものだったんだろうか。

私は馬鹿にされたと思った。
裏切られたような気持ちだった。
友達だと思ってたのに。
私のことを理解していると思ってたのに。
叩き返して出て行った喫茶店。
でもあいつは私の部屋までまた持ってきて、置いていった。

それで私は考えている。
自分の理屈ではなく、初めて他人の理屈を理解しようとして。
ガラじゃない。
本当にガラじゃないのに。

自分に挑戦するように、畳の上に広げたあいつからのメッセージ。
黒いジーンズ地のミニスカート。

これはお前に似合うと思う。
口説くというより、挑むように投げつけられた言葉を
私は思い出している。

ガラじゃない...ガラじゃないのか?
あいつは私に、この上なくあいつらしいやり方で何かを伝えたいのかもしれない。

私は考えている。
考えに考え
そして結局何もわからない。

私は立ち上がり、ボタンを外し、ジッパーを下ろす。
ジーンズを振り落とすように脱ぎ、目の前の挑戦状に足を通す。
ジッパーを上げ、ボタンを留める。

洗面所に行き、自分の姿を見ようとするが、
鏡は小さすぎてまったく見られない。
私は首を振って自分の臆病さを振り切る。
そのまま玄関に行き、スニーカーをはく。

ドアを開ける前に深呼吸をして、
そして私はドアを開けた。
これから私はあいつと対決することになる。

05.08.24
おはなし

微量毒素