微量毒素

おはなし
ジーンズ
李・青山華

昨日脱いで椅子の背にかけておいたジーンズをとる。
洗いたてのときと違ってずっしりと重い感じがする。
でもかまうことはない。ジーンズは作業着だから。

洗いたてのシャツを羽織り、馴染まず硬めのボタンを留める。
少しくったりとしたジーンズに勢いよく足を通し、
ぴったりと馴染んだ腰に合わせる。

ちょうどトーストがカリカリに焼きあがる。
オーブントースターから出したそれにマーガリンを落とし、
持っていく物をチェックする。

確認を終わると、ちょうどよく溶けたマーガリンが流れている。
トーストを傾けて流れているマーガリンを調整して、
適当なところでかじる。

かりっとした表面にしみ込み始めたマーガリンが香ばしい。
しばらくは一心にトーストを味わい続ける。
耳と舌の悦楽に十分ひたった後、私は立ち上がる。

出陣だ。きょうもきついだろう。
もう一度ジーンズの馴染み具合を確認して玄関のドアを開ける。
空が青い。風は爽快。始まりかけた夏の暑さの中へ、私は歩き出す。

05.08.31
おはなし

微量毒素