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お片付け |
李・青山華 |
片づけをするとさっぱりする。 それは今までそこにあったものを片付け、廃棄することで、 そのものに付随する思いや思い出、忘れたくない諸々のものを 一緒に廃棄してしまうからである。 時が経てば忘れていくのが人の姿であるならば、これは実に正しい行為である。 しかし廃棄されたものはもはや永遠に戻ってくることがない。 なぜならば、たとえ再びそのものを取り返すことが出来たとしても、 廃棄の判断をした時点でそのものに対する思いも変質してしまっているからである。 だから私は怖くて廃棄の判断をすることが出来ない。 そのものに対する自分の意識を変質させてしまえば、 そのものと自分の関係性は破綻し、二度と前のように戻ることが出来なくなるから。 世間一般の考え方であれば、それが正しいことであるのだろう。 しかし私にはそれができない。 過去と密接につながりながら進んで行く私は、 進むにつれて増殖していくものたちに押し潰されそうになりながら それでも前に手を伸ばす。 私のいる場所は、ある種の生物の巣のような様相を呈してそこにある。 |
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