微量毒素

おはなし

静まり返った住宅街
李・青山華

夜、静まり返った住宅街を、家に向かって歩いて行く。

家々は寝静まっているような顔をして、歩いている者をじっと観察している。
見られている緊張に、つい咳払いをしてしまうと、押し黙った家々がごうと唸る。
そしてその後は、さらなる圧力を以って観ている。

足音を忍ばせるわけにもいかず、見えない視線に押しつぶされながら、
家への道を急ぐ。
待っている灯りのあるところへ。

ところが、待っているはずの家に灯りがなかったら?
行き先を見失って、ずっと家々の間をさ迷い歩くことになる。
永遠の先に思える、朝日の訪れを待って。
どんどん強くなる圧力に押しつぶされながら。

05.03.23

おはなし

微量毒素