微量毒素
おはなし

Night

薄い夜

李・青山華
特別なことがあって、どうしても徹夜して仕事を仕上げたいときなどに徹夜することがある。事前に準備をして、食料も確保して、いざ取り掛かろうとするとなかなか気が乗らない。

まだ時間はたっぷりあるという意識がちらつき、目前の仕事に集中できない。時間だけがのろのろと過ぎていく。

相変わらず集中できず、同じ文章を何度も何度も繰り返し目で追っている。いらいらしてガムを噛んだり、コーヒーを飲んだりしても状況は変わってくれない。ふと気が付くとのろのろ過ぎていたはずの時間は数時間を越して、日付が変わろうとしている。

気分を変えることにして夜食を取ったりしているうちにも時間はどんどん進んでいる。慌てて仕事に取り組んでみるが、どうも思うように進まない。右往左往しているうちに次第に波に乗ってきて、ようやく仕事にのめりこみ始める。しばらくして手洗いに立つと、いつの間にか空が明るくなってきており愕然とする。

時計を見ればまだまだ時間はあるのだが、白み始めた空を見ると夜が終わってしまったようで乱れた心は治まらず、再び集中するのに時間をとってしまう。

やらなければならないことがある夜はとても薄っぺらく、山のようにあると思っていた時間はあっという間に過ぎ去っている。
05年11月02日
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