微量毒素

誰かの死んだ日の夜 おはなし

友人の死んだ日の夜
李・青山華


血がつながっているわけでも、愛があるわけでもない。
話していて腹の立つことも多かったし、気に障る仕草や行動も多かった。
それなのに、この喪失感は何だろう。


自分と同じ考え方をする者たち、自分に気に入られたいと考えて行動する者たちとは違う、
閉じた自分の外側から、自分と違う立脚点に立って、自分を批判し、認めてくれる人間が、
また一人いなくなったのだ。

そして、自分を批判しながらも許容してくれる人間は、そう多くはない。
おためごかしで曇らされていない世界への窓が減るごとに、あなたは閉塞していく。


崇拝者と他人だけの世界の中で、あなたの世界は腐食の速度を早めていく。
そしてあなたはそのことに気づかない。
腐食の度合いは、外から見なければわからないのだ。


「何だよ、それは。ひでえな」
「何でそんなことやってんだよ、みっともない」
という、腐食部分を示してくれる貴重な助言が、彼の視点から吐かれることはもう二度とないのだ。


あなたは彼のために、どんなことでもしてやりたいと思っていた。
まだまだ足りないと思っていた。
しかし、彼がその思いを受け止めることも、もはやないのだ。


おはなし

微量毒素