微量毒素

誰かの死んだ日の夜 おはなし

自分の死んだ日の夜
李・青山華


すべての電気信号が止まり、いわゆる生命活動が止まる。完全に止まるまでの間、
全身を駆け巡る信号は、今まで生きていたことすべての記憶である。
そしてその記憶は緩やかに動きを止めていき、あなたの存在はこの世から消える。
その先には、腐敗と分解だけが待っている。

自分が送ってきた人生は、すべてがここで終わるのであり、私はそれに満足しなければ
ならない。私はこうして生きてきて、そして今日、その生を終えた。
私は自分の生に、十分に満足している。

これから先、自分の育んだ信号パターンは消え、それほど時をおかずに自分の
信号パターンが社会に与えた何がしかの影響も消え去るだろう。
それが正しいことであり、それこそが死に臨んで私が望む、唯一のことである。

おはなし

微量毒素