誰かの死んだ日の夜 | おはなし |
大事なものの死んだ日の夜 |
李・青山華 |
あなたは結婚し、愛する妻と幸せな日々を過ごしている。 やがて子供が生まれ、様々な問題や不安を味わわされながら、子供を育てていく。 自分が過ごしてきた日々をなぞる様に育っていく子供を見て、愕然とするほどの 愛しさを覚える。そしていつか子供は自分の庇護下を離れ、外の世界に出てゆく。 時折は訪れ、子供の進んでいく道を伝えてはくれるが、子供は離れたところで、 一人で自分の道を歩んでいる。 それでも、あなたの不安や喜びは、常に子供の上にある。 そしてさらに年が過ぎ、自分がこの世から去ろうとしているときに、 自分とよく似た顔と、それと少し違った顔が見下ろしていることを知る。 自分の似姿としての子供と、子供の似姿としての子供の子供。 それを見て、自分のやってきたことに深い満足を覚えて目を瞑ろうとしたあなたは、 その目がすでに閉じられていたことを知る。 閉じていた目は開かれねばならず、閉じていた目を開いたあなたは、 今見ていたすべてが夢であることを知る。 子供は昨日、死んだのだ。 |
05.01.12 |