微量毒素

おはなし

菜の花
李・青山華


鮮やかなレモン色のこの花は、眼の届く限りの地平を埋め尽くす。
この花の景色はその明るさと鮮やかさにもかかわらず、不思議に淋しい。

昼の光の中で見ると、傍らにいない人のことばかり思い起こされる。
夕の光の中で見ると、自分がここにいることが覚束無くなってくる。
夜の中で見ると、始めたまま終わらせることを忘れたかくれんぼのことを思い出す。

彼女はそこにいる。
そこにいて待っている。
私の見いつけた、の言葉を。



おはなし

微量毒素