沈まない夜 |
李・青山華 |
夏のころに、日が暮れて、あたりが闇に包まれても、一向に夜が訪れない日がある。 そんな日には、夜のざわめきと静けさは来ない。 いつまでも昼間のままの喧騒と気怠るい暑さの雰囲気が残っている。 回りの気配が昼間のままなので、夜が来たということを身体も心も認めてくれず、 どうにも不安なまま、眠ることが出来ない。 昼間のままに書き物などを続けていても、どうにも気が散ってしまう。 前の道を子供たちが走り、人々がざわめきながら歩いているような気がして、 闇を透かして見るが、もちろんそんなことはない。 いつも通りの、人一人通らぬ夜である。 そしてふと気がつく。その日がお盆の中日であることに。 合点し、そのままざわめきの気配の中で書き物を続ける。 部屋に誰かが入ってきた気配もあるが、きょうはいいのだ。 私の様子を見たいものが来ているだけなのだから。 やがて新聞配達のオートバイの音が聞こえ、早い朝が来たのを知る。 空は僅かずつ白み始め、壮麗な朝焼けに彩られ、 きょうもまた暑い一日が始まることを告げる。 振り返る目には何も映らない。 生あるものは、何も。 |
05.08.10 |