Autumn
外套を羽織る
李・青山華
外に出る時に何も考えずにシャツ一枚で出られた時期を過ぎると、家を出る前に外套に手を通すという儀式が加わる。薄手であれ、厚手であれ、ただ少し出るだけでも家の中にいるときとは違う格好をしなければならないというのは、外に出るということにちょっとした覚悟のようなものを加えることになる。
春にどんどん着込んでいくものを脱ぎ捨てていった時と逆に、秋は自分の身体に多くのものを重ねていくことになる。そして身体が分厚く包まれていくことで思考がどんどん内側に向かい、色々なことを反芻するように思い出すことが多くなる。
秋が物思いの似合う季節だというのは外からもそれに適した誘因を与えられるからなのだ。
そして植物が色を失い空気が冷えて音がよく響くようになる頃、人は家の中で燃える火を見たり赤くなる電熱線を見てほっとし、過ぎた季節のこと、忘れていた諸々のことを思い出し、追憶に耽るのだ。