微量毒素
おはなし

Autumn

外套を羽織る 2

李・青山華
 分厚い外套に包まれていると、外で人と会っても距離が夏に比べて離れている。夏のようにすぐ打ち解けられず、ぎごちない会話を長い間続けることになる。

しかしそのせいで、また暖かいところに入った時には、外套を脱いだ時に夏以上に相手に親密感を抱いてしまうことに気付く。外套を脱ぐということは自分の被った殻を脱いでしまうことと意味を似せて、いつの間にか相手に許すつもりだった以上に親密になってしまうことがある。

これが外套の罪かどうか。そうなるのが秋という、冬に向かう季節に必要な特性なのかもしれない。
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