微量毒素
おはなし

Autumn

秋の野

李・青山華
夏の日差しの中で緑々していた野原が、秋の一筆であっという間に色を喪う。丈高かった草々も低い夕日の中で倒れ、朽ち果てていこうとしている。しかし寒々と冴え渡った空気は朽ちることさえ許さず、倒れたものどもは敗残の姿を晒したまま長い時間を過ごしていくことになる。

どれくらいの時が立ってか、あたりは一面の白となる。雪が降ったのだ。雪の下になっても、草々の形は崩れずに残っている。

ある日再び現れた地表は融けていく雪のしずくで潤い、表に残っているものも形を弛めている。この時点で既にそこここに淡い緑が生え初めている。

雪の下でも新しい命は芽生え、それが雪崩のようにあたりを埋め尽くした頃には雪の姿はない。それどころか前の秋に地を覆っていた草の姿もない。

喜びに満ちて生え誇る草をかき分けてみると、根元に既に痕跡もなくなろうとしているものが見える。彼らは今のこの野の礎となったのだ。
05年10月19日
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