微量毒素

おはなし

年が移るとき
李・青山華

年越しの夜は、いつもと変わらないはずなのに、やはりどこかが違う。
歳のいった子供たちは年が明けるまで起きていることを許され、それぞれに遊んだり、
大人たちに混じって話を聞いたりしている。
それより小さい子供たちは、文句を言いながら寝床に追い立てられていくが、
少し経って様子を見に行くと、既にぐっすり眠り込んでしまっている。

初めて年越しを迎える子供たちは、年がどこからやってくるのかが気になって、
時おり何気なさそうに窓の外を覗いたり、2階に向かう階段の闇の中を透かして
みたりする。

いつも寝る時間をとうに過ぎて、テレビの番組もいつの間にか雪の中のお寺の映像が
流れるようになった頃、蕎麦がふるまわれる。
いい加減に眠くなっており、とても食べられないような気がするが、食べ始めると
けっこう食べることが出来る。それを片付け終わる頃に、年が移る。

大人たちはあらたまって挨拶をしあう。子供たちはあらたまるのが気恥ずかしく、
互いの顔を見合っているうちに、大人たちに促されてこそばゆいような思いをしながら、
それでも神妙に挨拶を交し合う。そしてみんな窓のところに行って外の様子を窺う。
年が改まって何が変わったのかを見つけるためだ。
窓の外を覗いてみるが、特に何かが変わっているようには見えない。
ちょっと拍子抜けを感じさせられながら、子供たちは寝床に向かう。
寝床もいつもと変わらないように思えるが、それを確かめているうちに寝入ってしまう。

次の日の朝、起きてくると、すべてが新しくなっている。大人たちはきりっとした
いでたちで挨拶を交し合う。
子供たちも今朝は神妙に挨拶を交し合い、一つ大人に成ったことを感じている。
昨日の夜は気づかなかったけれど、確かに年は一つ進んだのだ。

05.01.05

おはなし
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