微量毒素

おはなし
木枯らし
李・青山華

木枯らしは少年に似ている。

あたり構わず走り回りながら、木を揺らし、ものを蹴飛ばし、
突然何かに気をとられてわだかまり、また突然立ち上がって走り回る。

何度怒っても、決してやめようとしない。
うれしそうに口笛を吹きながら走り回っている。
付き合いかねて、家の中に入ってしまっても、戸を叩き、窓を揺らす。
どうしても遊んでほしいらしい。

彼の手がそれほど冷たくなければ、もっと遊んでやってもいいのだが。



木枯らしは少女に似ている。

何度文句を言っても体にまとわりついてくる。
無視をしていると、どうしても構ってほしいらしく、マフラーを吹き飛ばそうとし、
髪の毛をぐしゃぐしゃにし、帽子を奪って、追いかけてくるのを待っている。

腹が立って本気で怒鳴りつけると、蒼白になって立ちすくむ。
さっきまでの騒がしさが嘘のように、ピンの落ちる音さえ聞こえそうなほど、
静まり返る。

いたたまれず咳払いをすると、はねるように少女が遠くへ立ち去ったのがわかる。
彼女はもう戻ってこない。理不尽な喪失感を携えて、家へ帰る。



木枯らしは老人に似ている。

一晩中、家の外で繰り言を言っている。
そんなことを言うから疎まれるのに、決してやめようとしない。
彼は一晩中文句を言い続け、耳を傾けない私のものを遠くに移動しておいたり、
家の前にゴミや雪を吹き寄せておく。

彼の気持ちがまったくわからないわけでもないので、私は黙ってそれを片付ける。
それで気が済むのか、彼は片付けている私の耳元で、穏やかに何か囁いている。
私はそれにじっくりと耳を傾ける。

05.02.23
おはなし
微量毒素