微量毒素

おはなし

木に触る
李・青山華


林の中に立つ木に触れる。
ごつごつしたものもあるが、ほのかに温みが伝わってくる。

木は生き物に優しい。

生まれたばかりは、生き物たちの餌になる。

少しでも大きくなれば、数知れない生き物たちに、住処と、食事と、
日光の熱を妨げる木陰を与える。
風を防ぐ盾にもなってくれる。
木の下に座り、木漏れ日を浴びながら語り合うのは楽しい。

倒れて死んでしまった後も、木は同じように、住処と、食事を与える。
森の中で倒れた木は、多くのものを養いながら、ゆっくりと朽ち果てていく。

切り倒され、切り刻まれてさえ、木は生き物に住処を与える。
殺されていながら、木の床は適度な弾力と安らぎを人に与え、
木の壁は寄りかかるだけで安心感を与えてくれる。

コンクリートでは、こうはいかない。
確かに確実に支えてはくれるが、その肌は、生き物を拒否し、
意思が通じるような気持ちになることはない。
他者との交流を断ち切りたいものにだけ、この素材は適している。
人は、コンクリートの上に木を張ることで、何とか折り合いをつける。


再び、木に触る。
その感触は、温かい。

子供たちは意味もなく林の中を走り回り、木々に抱きついている。
汚れるからと、制止の声を出そうとする人の、唇の前に指を立て、
子供たちの様子を眺めている。子供たちは走り回る。

子供たちは、落ち葉の積もった木々の間を走りながら、
木の優しさを感じ取っているのだ。

私は隣の人の手を取り、そばにある木に触れさせる。
そして、木々は黙して立ち続ける。
我々がここにいても、いなくても、まったく同じように。



おはなし
微量毒素