どよめく森 |
李・青山華 |
それほど風もないのに森全体がどよめいていることがある。 いったい何が起こっているのだろう。 木々は首を振り、しなやかな枝を鞭のように振り回したり、 見透かせないほど密集した葉を振りたてたりして大騒ぎをしている。 人が怯え足早に家路をたどる時に、私はその理由が知りたくて、 どよめきに耳を塞ぎながら森の中に入ってみる。 入り込んだ森の中は気が抜けるほど静かだ。 どよめきが遠く聞こえるものの、森の中にいる身には少しも威圧感を与えない。 森の中はいつも通り静寂と安らぎに満ちている。 首を捻りながら森の外に抜けると、やはり森はどよめき、 牙を剥いているように見える。 森にとって中に入りこんで欲しくない何かが、 どこかから森に入ろうとしているのかもしれない。 森は全身でそれを拒んでいるのだ。 |