微量毒素

おはなし
囲炉裏
李・青山華


黄色とオレンジ色を基調として、時に紅色の混じる囲炉裏の火。上がる炎より、
むしろ熾きの遠赤外線によって、室内を暖めるこのシステムは、人間と炎を
より親しく交わらせる。

囲炉裏の前に座り、古くから知っている人間と向かい合い、時に薪をくべ、
火掻き棒で炎を揺り覚まし、新しい炎を薪に移す。この作業を見ているだけで、
時間は満ち足り、ゆっくりと過ぎていく。何を話すこともない。

外は既に暗く、雪でも降り出したのか、一切の音が消える。
室内は眠そうな時計の音と、時おり崩れる熾きの、かそけき響きがあるだけである。
時に、木に残っていた樹液が燃えて、耳鳴りのようなジジジ...という音がするが、
音が消えてしまうと、今、本当に音がしたかどうかの確信が持てない。

長い長い時間が過ぎたような、先ほどから一刻も過ぎていないような曖昧さに襲われ、
助けを求めるように顔を上げると、目の前には年齢も定かでないほどの老人が
座っている。

初めからそうであったのか、相応の時間が過ぎたのか。私は自分の手を上げて、
その示す年齢を確認することが、どうしてもできない。

おはなし
微量毒素