Earth
溶岩
李・青山華
子供と溶岩について話をする機会があった。子供は溶岩は火に属するものと認識していたようだ。溶岩は本来は岩や石なのであると説明したが、納得してもらえない。
まあ当たり前だろう。自分たちの乗っている地面は、実はどろどろのスープの上に出来た薄い牛乳の膜のようなものだと言われても、素直に納得できるほうがどうかしている。まだ地動説の方が受け入れやすいだろう。
氷を温かいところに置いておくと融けるように、チーズがパンの上で融けていくように、全てのものはそのものが耐えられる温度を超えると塊を維持できず、融け初めてしまうのだ、と説明した。
石も融けるの、土も?
当然。
車も融けるの?
ああ。
お父さんは? 僕は融けるの?
この世にあるものは全部融けるんだよ。融けるのはそれを造っているものがどの程度の温度に耐えられるかによって決まるんだ。人間はたんぱく質とカルシウムで出来ているから、卵が融ける温度になれば融けてしまうんだ。
そうか、人間は卵と同じなんだ。
どこをどう得心したのか、とりあえず子供は納得したらしい。向こうに行きかけて子供は立ち止まり、私の顔を見た。
融ける時はわかるの?
私は意味を取れず、訊き返した。
わかるって、何が?
融ける時だよ。自分が融ける時はいつから融けるかってわかるの?
ああ、それはものすごい熱さになるから間違いなくわかるだろう。でも普通の時には融けたりしないよ。
子供は少し考えて言った。
人間は石より融けやすいよね。
ああ。
牛乳の膜が破れたらどうするの?
もちろん私もどうすればいいか知らない。