Earth
泥団子
李・青山華
陽溜まりの中、こちらに背を向けて一心不乱に何かをしている子供がいる。近づいて覗き込んでみて納得した。泥団子だ。覚えがないわけでもない。
泥団子作りは子供の遊びだが、いつまでも心惹かれるものがある。大人になった自分でも、ふと作りたいと思うことがあるが、時間をかけることができない自分は参加資格がない。
泥団子作りには十分な時間が必要である。それも計れる時間ではなく、そのときに自分の持っている時間すべてを奉げなければならない。ほかの事に残せる時間を考えてはいけない。やることを持て余してどこの時間で何をこなそうかと悩んでいる私などにできるわけもない。
その絶対条件の下で、それを見事に体現して子供は泥団子を固めている。近づいた私に気づく様子もなく、なすりつけ、固め、磨き上げている。その忘我ぶりは見事である。彼は今「世界」を創っているのだ。
いけない。私はふと自分が彼の手元を翳らせていることに気づく。私はそこを離れなければならない。泥団子作りにはちょっとした太陽の光の加減もとても重要なのだ。それを妨げることは避けなければならない。それが創造者への礼儀である。
05年10月26日