微量毒素

metal おはなし
精錬
李・青山華

五大元素のうち、火は現象である。
木と水と土は、その中に数多のものを内包している自然物である。
金属だけが自然の状態であるままではなく、
人の手をもって加工して初めて現れる実体である。


金属は木にも水にも土にも含まれている。
しかし金属として認識されるのは、
あくまで精錬を経て抽出された純粋なものだけである。

意図的に求められた純粋なものという存在には、
どこか不自然な胡散臭さがある。


自然の中であらゆるものは混ざり合い、融合して存在している。
それで世界は成立している。
その中の一部だけを抽出してしまうという行為は、
とても反自然的な行為である。


そのようにして抽出されたものは道具を形づくる。
純度の高いものは強い結合力を示して、他の存在を侵すことが容易に出来る。

木を切り倒し、土を掘り返し、石を砕き、植物を切り取る。
抽出された純粋存在はさまざまな方法で人間の役に立たせられる。
そしてそれは生物を殺し、同属である人間を殺すのにも、とても役に立つ。


すべてのものを侵略していくこの存在は、
その発生の過程からすでに破壊者としての位置を確固として持つ。
精錬のときに発生する廃液もまた、あらゆる生命を蝕んでゆくのだ。

05.07.06
metal おはなし
微量毒素